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美容コラム 2025/02/25
耕作放棄地とは何か?自然と共に生きる地域再生へ9つのヒント
近年、日本各地で増加している「耕作放棄地」をご存じでしょうか。
かつて農地として活用されていた土地が手入れされず、そのまま放置されてしまう問題が深刻化しています。
今回は、耕作放棄地が生まれる原因やその影響、再生に向けた具体的な方法について詳しく解説します。
耕作放棄地の問題と向き合い、再生によって生まれた魅力的な商品や、地域の可能性に目を向けてみませんか。
耕作放棄地とは、以前耕作されていた田や畑などが、一度使用されなくなり、そのまま放置されてしまった状態を指します。
この問題は日本全国で深刻化しており、とくに中山間地域で顕著です。
不法投棄や生態系の崩壊など、地域社会に多くの影響を及ぼす問題として注目されています。
耕作放棄地ができてしまう原因について、考えてみましょう。
日本の農地の多くは中山間地域に位置しています。
この地域は、平地に比べて地形が険しく傾斜が多いため、どうしても大型農業機械を導入しづらいという課題が。
さらに、道路や水路の整備が行き届かないことも多く、収穫した農作物を市場に運ぶ物流コストも高くなります。
そのため、都市部の農地に比べて生産性が低くなり、次第に農業を続けることが難しくなるのです。
日本の農業従事者の平均年齢は年々上昇しており、2020年で67.8歳、60歳以上の方が74%となっています。
一方で、若い世代は都市部での生活や、別の仕事を選ぶ傾向があり、実家の農業を継がないケースが増えています。
農業は体力が必要な仕事のため、高齢者が一人で続けるのは困難です。
家族のサポートが得られず、後継者が見つからない場合、その土地は次第に耕作放棄地となってしまいます。
農業は天候や市場価格の変動に大きく左右されるため、安定した収益を得ることが難しい職業のひとつです。
とくに小規模農家の場合、大量生産ができず、生産コストが高くなりがちです。
さらに、中山間地域では作業効率が悪く、農地の維持費や機械の導入費用が利益を圧迫します。
こうした経済的負担により、農業を断念せざるを得ないケースが増えているのです。
近年、気候変動による異常気象が、農業に深刻な影響を及ぼしています。
たとえば、猛暑や干ばつが続くことで作物の生育が難しくなったり、集中豪雨によって農地が浸水したりするケースも増えています。
また、気温の変化により、従来栽培されていた作物が適さなくなることも少なくありません。
このような環境の変化により、収穫量の減少や品質の低下が起こり、農業を続ける意欲を失う農家が増えています。
農業を効率的におこなうためには、トラクターやコンバインなどの機械が不可欠ですが、それらの購入や維持には多額の費用がかかります。
とくに中山間地域では、傾斜のある土地に対応できる特殊な機械が必要となり、コストの増加は避けられません。
また、機械の操作には技術や経験が必要ですが、農業を志す若者が減少し、人手不足が深刻化しています。
結果として、農地を管理することが困難になり、耕作放棄が進んでしまうのです。
このように、耕作放棄地が増加する背景には、地域の地形的な問題・経済的な要因・環境変化・高齢化・人手不足といった複数の要因が絡み合っています。
それぞれの原因に適した対策を講じることが、放棄地の再生と持続可能な農業の実現につながります。
耕作放棄地が存在することで、どんな問題が起こるのでしょうか。
耕作されなくなった土地は、草木が生い茂り、環境が変化します。
これにより、本来その地域に生息していた動植物が減少し、代わりに特定の外来種が繁殖するなど、生態系のバランスが崩れてしまうのです。
また、放棄地には人の手が入らないため、動物による農作物の食害が増え、近隣の農家へも被害が及ぶことがあります。
管理されなくなった農地は、害虫や病気の温床となることがあります。
たとえば、害虫が繁殖し、周囲の農地に被害を及ぼすケースが報告されています。
さらに、病気にかかった作物が放置されることで、近隣の健康な作物へ病害が広がるリスクも。
定期的に耕作や手入れがおこなわれていれば防げる問題も、放棄されることで深刻化するのです。
長年耕作されていた土地は、適度に耕され、栄養が補給されることで肥沃な状態が保たれています。
しかし、耕作がおこなわれなくなると土が固まり、水はけが悪くなったり、養分が不足したりして、作物の生育に適さない状態になります。
いざ再利用しようとしても、土壌を回復させるには多くの時間と労力が必要になってしまうのです。
耕作放棄地は、人の目が届きにくくなるため、不法投棄の温床になりやすいという問題もあります。
農業機械や家庭ごみ、産業廃棄物などが捨てられ、景観が損なわれるだけでなく、土壌や地下水の汚染につながることも。
とくに、プラスチック廃棄物や有害物質が混入すると、長期的な環境汚染を引き起こす可能性があります。
耕作がおこなわれていた土地は、適度に管理され、土壌の流出が抑えられています。
しかし、放棄されると草木が繁茂し、地盤がもろくなることで、土砂崩れや洪水のリスクも。
とくに中山間地域では、豪雨時に水が適切に排水されず、近隣の住宅地や道路に被害を及ぼすこともあります。
こうした災害リスクを未然に防ぐためにも、適切な管理が求められます。
このように、耕作放棄地は単に使われていない土地、というだけではありません。
生態系の変化・病害虫の発生・土壌劣化・災害リスクなど、周囲の環境にも大きな影響を与えます。
こうした問題を未然に防ぎ、持続可能な地域づくりを進めるためにも、適切な対策が必要です。
耕作放棄地を再生するためにできる、9つの対策を紹介します。
耕作放棄地の再生には、農業機械の導入や土壌改良など、多くの費用がかかります。
政府や自治体では、農業振興や地域活性化を目的とした補助金制度を設けています。
たとえば、耕作放棄地の再生事業に関する支援金や、農業機械購入の補助金などを活用することで、負担を軽減しながら再生プロジェクトを進めることが可能です。
人手不足や労力の問題を解決するために、スマート農業の導入が注目されています。
ドローンによる土壌管理や、AIを活用した最適な水や肥料の供給システムなど、スマート農業の可能性はこれから広がっていくでしょう。
これらを活用すれば、効率よく農業をおこなうことができます。
中山間地域では、遠隔操作で管理できる技術が導入されることで、作業負担を減らしながら生産性を向上させることが期待されています。
耕作放棄地を再生する際には、その土地の環境に適した作物を選ぶことが重要です。
たとえば、乾燥や寒冷地にも適応できる品種を選べば、育成の手間が少なくなり、収穫率を向上させることができます。
近年では、耐病性の高い品種も開発されており、病害虫のリスクを軽減しながら効率よく生産できる作物が増えています。
耕作放棄地を活用して、地域の特産品を開発する取り組みも進んでいます。
ハーブ・果物・香辛料など付加価値の高い作物を栽培し、加工品として販売することで、収益化も可能に。
とくに、オーガニック栽培に適した土地では、自然派志向の消費者に向けたブランド展開が期待できます。
耕作が難しい土地には、家畜を放牧する方法も有効です。
牛やヤギなどを放牧すれば、雑草を自然に処理でき、土壌の肥沃化にも貢献します。
また、家畜の飼育と組み合わせた農業(アグロフォレストリー)をおこなうことで、持続可能な土地利用が実現できます。
農業だけにこだわらず、耕作放棄地を別の用途に転用することで、新たな活用方法が生まれます。
たとえば、キャンプ場・観光施設・アートスペースなどとして再利用することで、地域の魅力を高めることにもつながりますね。
自然を活かしたエコツーリズムは、環境保護と経済発展を両立させる手段として注目されています。
適切に管理されない耕作放棄地は、土砂崩れや洪水のリスクを高めることがあります。
そのため、土地の再生と同時に、災害対策としての役割も果たせるよう工夫することが重要です。
たとえば、植樹をおこない、地盤を強化することで、土壌の流出を防ぐことができます。
また、雨水を適切に排水できるような設計を取り入れることで、自然災害に強い土地へと、生まれ変わらせることが可能です。
耕作放棄地の再生は、一人の力では限界があります。
地域住民が協力し、コミュニティを形成することで、より持続可能な土地活用が可能になるかもしれません。
たとえば、共同農園を運営し、収穫した作物を地域内で消費する「地産地消」の取り組みを進めることで、地域の結びつきが強まります。
自治体やNPO団体が主導し、定期的なイベントを開催することで、継続的な活動を促進できます。
耕作放棄地の問題を解決するためには、未来の世代に関心を持ってもらうことも重要です。
学校や地域でのワークショップを通じて、子どもたちに農業の楽しさや環境保全の大切さを伝えることで、次世代へ知識と意識を受け継ぐことができます。
たとえば、小学校で農業体験プログラムを実施し、実際に作物を育てる経験を提供することで、子どもたちに農業の魅力を身近に感じてもらうことができます。
「few」は、人の手が入らなくなった放棄茶畑で、力強く育ったチャノキ(お茶の葉と花)や茶実を原料に使用した、ナチュラルコスメブランドです。
こちらは、宇治茶の産地である南山城村の耕作放棄地を活用した、再生事業のひとつです。
この取り組みを通じて、地域活性化と環境保全の両立を目指しています。
たとえば、私たちは茶花摘みイベントを4年間おこなっています。
参加者は110名を超えて、遠方からは東京や愛知から参加されています。
皆さん茶花を摘みに集中して、笑顔の広がりがあります。
また、放棄茶畑は3年で0.3haを整備することができました。
茶花を摘みやすいように、背を低く刈り込み光と風が通るようにしています。
今後は茶花用茶畑の整備を進めると共に、今年(2025)は、自然環境の再生事業として京都の企業さんとの協働で、放棄茶畑の約0.2haを「生物多様性維持」に資するために、水辺の環境をつくり、茶花イベントに参加した方が、自然環境と親しみ、生き物への共生を実感しつつ、楽しめる場を創世しようと計画し取り組んでいます。
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ほのかな茶花のかおりと、自然の力で育ったチャノキの力を、ぜひ体感してみてください。
耕作放棄地の再生には、多様なアプローチが求められます。
補助金やスマート農業を活用することで作業の効率化を図りながら、特産品の開発や家畜の導入など、新たな価値を生み出す取り組みも重要です。
さらに、農業以外の用途として活用したり、災害リスクを軽減するために適切な土地管理をおこなったりすることも、地域にとって大きな意義があります。
また、地域コミュニティの形成や教育活動を通じて、持続可能な土地活用へとつなげることも大切です。
耕作放棄地の問題に向き合い、それぞれの地域に合った解決策を見出すことで、豊かな自然と暮らしを守ることができます。